札幌市のカスタマーハラスメント対策に学ぶ|サービスマニュアルと広聴が支える行政の進化

札幌市視察レポート|カスタマーハラスメント対策と「学び続ける組織」のかたち

■ 札幌市を訪れて

11月上旬、札幌市役所を訪れました。
今回のテーマは、全国でも注目されている「カスタマーハラスメント対策」。

現場でお話を伺う中で感じたのは、
この取り組みが“職員を守るための仕組み”であると同時に、
“市民との関係をより良くするための仕組み”でもあるということでした。


■ 苦情から始まる、新しい気づき

札幌市では、職員へのアンケートで9割以上がカスハラ的な言動に悩んだ経験があると回答。
放置できない現状を踏まえ、令和5年度に基本方針とマニュアルを整備しました。

その一方で、担当者が繰り返し語っていたのは、
**「苦情は、改善の出発点」**という考え方。
行政サービスは市民の声から始まり、そこに新しい気づきを見出せるかどうかが何よりも重要です。

カスタマーハラスメント対策は“苦情を排除する制度”ではなく、
“市民と職員の双方が冷静に向き合うための環境づくり”。
その視点こそが、この制度の根幹にあると感じました。


■ サービスマニュアルがあって、はじめて成り立つ

印象的だったのは、マニュアルの位置づけです。
札幌市では、カスハラ対応マニュアルを「画一的な手順書」ではなく、**“考え方の指針”**として設計しています。

現場の実情に合わせた柔軟な対応を求める一方で、その根底には「接遇=サービスマニュアル」が欠かせないという認識がありました。

私は、ここにこの制度の本質があると感じました。
カスタマーハラスメント対策は、サービスマニュアルがあって初めて成り立つ。
職員一人ひとりが、サービス提供の基本姿勢を理解していなければ、“毅然とした対応”も“誠実な傾聴”も生まれません。

録音やポスターなどの具体策は、あくまでその基盤を支えるツールにすぎません。
大切なのは、「どう応じるか」を形として示すことよりも、「なぜ応じるのか」を職員全員で共有する文化を育てること。

私は、この“サービスマニュアル”という考え方が根づけば、
カスタマーハラスメント対策はさらに進化すると確信しています。
制度として終わるのではなく、現場で磨かれ続ける学びの仕組みになる。
その先にこそ、市民と行政が信頼でつながる本当の対話があるのだと思います。


■ 「毅然」と「傾聴」を両立させる文化へ

札幌市の取り組みで特徴的だったのは、
職員を守る毅然さと、市民の声を聴く謙虚さのバランス。

一方的な線引きや排除ではなく、
“傾聴から始まり、整理された対話を生む”という基本姿勢を大切にしていました。
職員が一人で抱え込まず、組織として支え合う仕組みも整えられています。

また、精神的な負担が生じた職員には、
総務課や健康管理課が連携しながらメンタルケアを含むサポート体制を整えています。
「人を守る」という理念が、制度の中だけでなく職場文化にまで浸透していることが印象的でした。

市民にとっても、職員にとっても、安心して言葉を交わせる環境。
それが、結果として行政サービス全体の質を高めているのです。


■ 広聴の力 ― データで「声」を活かす

今回の視察内容から少し外れますが、
私が特に感銘を受けたのは、札幌市の広聴(こうちょう)機能でした。

市民から寄せられた意見や要望を、単なる苦情対応で終わらせず、
データとして分析し、各部局の政策改善に活かしている

この姿勢が、まさに「苦情から始まる学び」を体現していると感じました。
職員の一人ひとりが、市民の声を“評価”ではなく“情報資産”として扱う。
そうした文化が根づいていることが、札幌市の真の強みだと思います。

制度をつくることも大切ですが、
その裏でデータに基づき、声を未来の政策へ転換する力こそ、
行政が進化し続ける源だと感じました。


■ 視察を終えて

今回の視察で強く心に残ったのは、
**“カスハラ対策=人を育てる取り組み”**ということ。

クレーム対応は、実は職員一人ひとりの成長の機会でもあります。
その苦情の中にどれだけの気づきを見いだせるか。
そこに、行政が変わり続ける力が宿ると感じました。

「学び続ける組織」――
それは、制度ではなく姿勢の問題です。

札幌市の取組に学びながら、
私たちも、苦情を恐れず、対話から学びへつなげる行政文化を、
少しずつでも、あわら市の現場から実践していきたいと思います。

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