防災倉庫は「量」から「最適化」の時代へ|現場で考えた備蓄と避難所の役割

防災倉庫は「量」から「最適化」の時代へ

目次

現場を確認して見えてきた、備蓄と避難所の役割

災害への備えとして、防災倉庫の整備は欠かせません。

これまでは、「どれだけ多くの物資を備蓄しているか」が重視されてきました。しかし、災害の種類や地域の状況によって、本当に必要となる物資や量は異なります。

大切なのは、単に備蓄を増やすことではなく、必要な物資を、必要な場所に、必要な量だけ配置し、災害時に確実に使える状態にしておくことです。

先日、あわら市内の防災倉庫を確認し、担当者から現在の備蓄や設備、今後の課題について話を伺いました。

現場を見ることで、防災倉庫は単なる「物を保管する場所」ではなく、災害発生後の支援を動かす重要な拠点であることを、改めて感じました。

整理された倉庫と、少しずつ進む設備の更新

倉庫内は整理整頓され、必要な物資が適切に保管されていました。

防災倉庫では、物資の数だけでなく、

  • どこに何があるか分かること
  • すぐに取り出せること
  • 使用期限や状態を確認できること
  • 必要な場所へ運び出せること

が重要です。

災害時には、倉庫の中をゆっくり探している余裕はありません。平常時から整理し、誰が見ても分かる状態を保つことが、実際の災害対応につながります。

担当者との話の中では、防災設備にも少しずつ変化が生まれていることが分かりました。

例えば、発電機はガソリン式からガス式への変更が進められています。また、今年度の当初予算では、ソーラーパネルと蓄電池の整備も予定されています。

今回は、まだ実際の設備を確認することはできませんでしたが、整備後には、どのような場面で使用するのか、どの設備へ電力を供給できるのか、停電時にどれだけ使用できるのかなども、現場で確認していきたいと思います。

災害時には、燃料が手に入りにくくなることや、停電が長期化することも想定されます。発電方法を一つに頼らず、複数の手段を準備しておくことは、災害対応を継続する上で大切な視点です。

しかし、私はもう一つ大切なことがあると考えています。

設備を整備したことと、実際に使えることは、まったく別の話です。

新しい設備が導入されると、「整備できた」という安心感は生まれます。しかし、本当に重要なのは、災害が発生した瞬間に、その設備が確実に使えることです。

誰が操作するのか。

必要なときにすぐ動かせるのか。

どの機器へ電力を供給するのか。

どれくらいの時間使用できるのか。

日頃の点検や訓練は十分なのか。

こうした運用まで考えて初めて、防災設備は力を発揮します。

私は、防災で最も大切なのは、**「整備した」という満足感ではなく、「使えること」、そして「救えること」**だと思っています。

どれだけ立派な設備があっても、必要なときに使えなければ意味がありません。

防災倉庫は「ハザード × 想定避難者数 × 孤立リスク」で考える

今回、担当者との話の中で印象に残ったのは、防災倉庫は一律に整備するのではなく、地域ごとのリスクに応じて考えるという視点でした。

これまでの防災倉庫は、比較的安全な指定避難所を中心に、同じような備蓄品を配置する考え方が一般的でした。

もちろん、この考え方は今でも大切です。しかし、近年は災害の教訓を踏まえ、より実情に合わせた備蓄へと考え方が変わりつつあります。

私は、その考え方を一言で表すと、

「ハザード × 想定避難者数 × 孤立リスク」

この3つを組み合わせて考えることだと感じました。

例えば、

  • ハザード…洪水や土砂災害、地震など、その地域で想定される災害
  • 想定避難者数…実際に何人程度が避難することになるのか
  • 孤立リスク…道路の寸断などにより、支援物資が届きにくくなる可能性

この3つの条件によって、必要な備蓄の内容や量は変わってきます。

例えば、水は災害直後から必要となるため、各避難所や公民館など身近な場所へ分散して備蓄することが重要です。

一方で、食料については、熊本地震などの経験を踏まえ、支援物資は発災からおおむね3日以内に各地へ届けられる体制が整えられつつあります。もちろん、必要な量がすぐに十分届くとは限りませんが、以前より物流体制は大きく改善されています。

そのため、すべての避難所に大量の食料を備蓄するのではなく、拠点となる防災倉庫を中心に備えながら、支援物資との役割分担を考えることもできます。

しかし、ハザードマップなどから孤立する可能性が高い地域は別です。

道路が寸断されれば、支援物資が予定どおり届かない可能性があります。そのような地域では、食料や生活必需品についても地域内で一定期間対応できる備蓄が必要になります。

つまり、

「すべての避難所に同じ物を同じ量だけ置く」のではなく、地域ごとの条件に合わせて備蓄を最適化する。

これが、これからの防災倉庫に求められる考え方ではないでしょうか。

私は、防災倉庫は「どれだけ備蓄しているか」を競う時代ではなく、**「ハザード × 想定避難者数 × 孤立リスク」**を踏まえ、本当に必要な場所へ、必要な物資を配置する時代になってきていると感じました。

ローリングストックという考え方

もう一つ重要なのが、「ローリングストック」です。

これまでは、

「購入 → 保管 → 賞味期限切れ → 更新」

という管理が一般的でした。

しかし現在は、

「購入 → 活用 → 補充」

というサイクルで備蓄を管理する考え方が広がっています。

防災訓練や地域のイベントなどで備蓄品を活用し、その都度新しいものを補充することで、

  • 廃棄を減らせる
  • 常に新しい備蓄を維持できる
  • 実際の使い方を確認できる

というメリットがあります。

行政の備蓄は家庭とは異なりますが、「保管すること」ではなく、「使いながら備える」という考え方は、今後ますます重要になっていくと感じました。

避難所の役割を改めて考える

担当者との話を通して、私は避難所の役割についても改めて考えました。

避難所は、災害直後から何不自由なく生活する場所ではありません。

まずは、

  • 命を守ること
  • 多くの人が集まり、不安を和らげること
  • 雨風や寒さ、暑さをしのげること
  • 飲み水を確保できること

これが最初の役割だと思います。

その後、時間の経過とともに支援物資が届き、避難生活を支える体制へと移っていきます。

もちろん、高齢者や乳幼児、障がいのある方など、それぞれに必要となる物資は異なります。

だからこそ、備蓄も「一律」ではなく、多様な避難者を想定した準備が必要になります。

トイレは「ある」だけでは使えない

担当者との話では、避難所のトイレについても話題になりました。

災害時には断水によって、水洗トイレが使えなくなることがあります。

しかし、避難者にとっては建物のトイレが最も使いやすい場所です。

そのため、凝固剤や専用袋を使った運用方法を、平常時から知っておくことが重要になります。

設備があっても、使い方を知らなければ意味がありません。

ここでも大切なのは、「あること」ではなく、「使えること」だと感じました。

防災倉庫は「保管庫」ではなく「災害対応拠点」

防災倉庫を評価する際には、

① 必要な物資があるか。

② 今すぐ使える状態か。

③ すぐに持ち出せるか。

④ 必要な場所へ届けられるか。

この4つの視点が重要だと考えています。

災害時には、物資が倉庫にあるだけでは意味がありません。

誰が運ぶのか。

どのルートで届けるのか。

孤立した地域へは、どう支援するのか。

物流まで含めて考えてこそ、本当に機能する防災倉庫になります。

物資が届かない問題については、防災の中でも非常に重要なテーマです。この点については、改めて別の記事で整理したいと考えています。

あわら市でも考えたいこと

今回、防災倉庫を確認し、設備や備蓄が着実に整備されていることを知ることができました。

一方で、防災は整備して終わるものではありません。

本当に大切なのは、災害が起きたときに、市民の命と生活を守れるかどうかです。

防災倉庫も、

「どれだけ備蓄しているか」

ではなく、

「必要なときに使えるか」「必要な人へ届けられるか」「その備えによって人を救えるか」

という視点で考えていく必要があります。

災害は、いつ、どこで起きるか分かりません。

だからこそ、防災は「整備した」という安心感で終わるものではなく、本当に使えるかを問い続けることが大切だと私は考えています。

防災倉庫も、普段は静かな倉庫のままであることが一番です。

しかし、いざ災害が発生したときには、市民の命と生活を支える拠点として、確実に機能しなければなりません。

そのためにも、これからも現場を歩き、担当者の声に耳を傾け、一つひとつ確認しながら調査・研究を続けていきます。

そして、現場で得た気づきを、市民の皆さんの安心につながる政策として、市政へ提案していきたいと思います。

  • URLをコピーしました!
目次