あわら市で行われた災害対応の図上訓練を見学しました。
会場では、職員の皆さんが班ごとに分かれ、マニュアルを確認しながら、次々と入ってくる想定に対応していました。
判断する。
行動する。
報告する。
そして、問題があればその場で確認する。
その様子を見ながら改めて感じたのは、訓練とは、決められた手順をきれいにこなすためだけのものではないということです。
「実際に動いてみて、どこで困るのかを見つける」
そこに大きな意味があるのだと思います。
マニュアルを「使ってみる」から分かること
今回の訓練では、災害対策本部運営マニュアルなどを確認しながら対応が進められていました。
もちろん、災害対応にマニュアルは欠かせません。
しかし、実際に動いてみると、
「この場合は誰が判断するのか」
「この情報は、どこへ伝えるのか」
「ここが抜けているのではないか」
といった疑問が出てきます。
それをその場で共有し、改善につなげていく。
マニュアルを作って終わりではなく、訓練の中で使い、問題を見つけ、また直していく。
その繰り返しが大切なのだと感じました。
次々と入ってくる情報に、どう対応するか
訓練は、一つの出来事だけを半日かけて考えるものではありませんでした。
時間が進むにつれて、新しい情報や新しい状況が次々と加わっていきます。
今、何を優先するのか。
誰が対応するのか。
どの班と情報を共有するのか。
次に何が起こる可能性があるのか。
その都度、考えながら対応していきます。
実際の災害でも、必要な情報が順番通り、分かりやすく届くとは限りません。
複数のことが同時に起きたり、連絡が遅れて入ったり、想定していた人がその場にいなかったりすることも考えられます。
だからこそ訓練では、混乱することも想定しながら動いてみることが必要なのだと思います。
特に印象に残った「自分たちで考えて動く姿」
今回、特に目に留まったのが、各班の皆さんが自主的に動いていたことでした。

それぞれに役割はあります。
しかし、自分に割り振られた仕事だけを行うのではなく、班として何をしなければならないのかを考えながら、
「次は何が必要だろう」
「この情報は確認した方がいいのではないか」
と動いているように見えました。
災害時には、特定の一人だけに仕事や知識が集中していると、その人が不在になっただけで対応が止まってしまうことがあります。
だからこそ、
今何をしているのか。
どこまで進んでいるのか。
次に何をするのか。
を周囲と共有し、できるだけ引き継げる状態をつくっておく。
そうした積み重ねも大切なのだと思います。
図上訓練で必要なのは「想像する力」
私は、図上訓練でとても大切なのは、想像する力だと思っています。
災害が起きた。
その次に何が起きるのか。
さらにその次には何が起きるのか。
どこに問い合わせが集中するのか。
どこで人が足りなくなるのか。
どこで判断が止まりそうなのか。
市民の皆さんは、どんな行動をするのか。
そこまで想像してみる。
そして、「ここで混乱するかもしれない」と分かるのであれば、平時のうちに人や仕組みを準備できないか考える。
それが訓練につながっていくのだと思います。
訓練していても、実際の災害では慌てる
先日の大雨対応についても、関係者の皆さんと振り返る機会がありました。
これまで訓練を重ねていても、実際の災害になれば慌てることがあります。
思うように動けないこともあります。
私は、それ自体が訓練の失敗だとは思いません。
実際の災害を、すべて事前に想定することはできないからです。
大切なのは、うまくいかなかったことを、そのままにしないこと。
なぜできなかったのか。
何が足りなかったのか。
次はどうするのか。
振り返り、また訓練する。
そして、また新しい課題を見つける。
その積み重ねによって、少しずつ対応できることが増えていくのだと思います。
マニュアルだけではなく、「経験した人」を増やす
今回の訓練を見て、もう一つ感じたことがあります。
訓練を重ねる意味は、マニュアルが良くなることだけではありません。
災害対応を経験した人が増えていくこと自体が、まちの力になる。
さまざまな部署の職員が訓練に参加し、それぞれ違う役割を経験することで、
「この部署は、こう動くのか」
「この情報は、ここにも必要だ」
「この場合は、ここへつなげればいい」
ということが少しずつ分かるようになります。
一つの仕事だけではなく、災害対応全体を見ながら考えられる人が増えていく。
そうした経験が組織の中に積み重なれば、特定の人だけに頼らず、対応を引き継ぎやすい体制にもつながっていくのではないでしょうか。

行政だけでは災害対応はできない

大きな災害になれば、市役所だけですべてに対応することはできません。
消防、自衛隊、県などの関係機関だけでなく、電気や水道などの事業者、建設関係、医療・福祉関係、地域の区長さん、防災士など、さまざまな人の力が必要になります。
だからこそ、平時のうちから、
誰に何をお願いできるのか。
どこまで対応できるのか。
そこでは対応できない場合、次は誰につなぐのか。
そうしたことまで考えておく必要があります。
専門的な知識を持つ人であっても、すべてに対応できるわけではありません。
行政にも、地域にも、専門機関にも、それぞれできることとできないことがあります。
その境目を知り、足りない部分をどう補うのかを考えておく。
これも防災の大切な準備だと思います。
「訓練しているから安心」で終わらせない
こうした訓練が行われていることを知っていただくことは、市民の皆さんの安心にもつながると思います。
ただ、今回の記事で伝えたいのは、
「行政が訓練しているから安心です」
ということだけではありません。
むしろ、この機会に、
「自分の地域で災害が起きたら、どうするだろう」
と少し考えていただければと思っています。
家族はどこにいるのか。
連絡が取れなかったらどうするのか。
どこへ避難するのか。
高齢の家族や子どもを誰が支えるのか。
自宅に水や食料はあるのか。
すべてを完璧に備えることは難しいと思います。
でも、
「大切な人を守るために、自分ならどうするだろう」
と一度考えてみる。
そこから備えは始まるのではないでしょうか。
現場で学び、次につなげる
災害は、いつ起こるか分かりません。
だからこそ、訓練する。
実際に動いてみる。
課題を見つける。
改善する。
そして、それを経験できる人を増やしていく。
行政の中だけではなく、地域や関係機関ともつながりながら、その積み重ねを続けていくことが、まちの防災力につながっていくのだと思います。
私自身も、こうした現場を見て学び、そこで感じたことを皆さんに伝えていきたいと思います。
今回の訓練を見て改めて感じたのは、
大切なのは、訓練を行ったことではなく、そこで何を見つけ、次にどう変えていくか。
ということでした。
この記事が、ご自身のこと、ご家族のこと、そして大切な人のことを考える小さなきっかけになればと思います。



