一般質問 ゼロカーボンとごみ袋の価格──生活支援と環境政策を両立するあわら市の挑戦

あわら市は「ゼロカーボンシティ」を表明し、脱炭素社会の実現に向けて歩みを進めています。

今回の一般質問では、この理念を“掲げるだけ”でなく、どうすれば市民一人ひとりの暮らしに根づく政策として実現できるのか、その具体的な形を問いました。

テーマは、生活に最も身近な「ごみ」。

物価高騰が続く今、日常で感じる負担の一つが「ごみ袋の価格」です。

この問題は単なる制度の話ではなく、生活そのものに直結するリアルな課題です。

市が生活者の目線で動くなら、「ごみ袋の価格見直し」はまさに本当の物価高騰対策です。

一方で、その実現には、分別の徹底や再資源化の推進といった“市民協働”が欠かせません。

分別を進めることで処理コストが下がり、負担が軽くなる。

行動と結果のつながりを「見える化」し、市民が実感できる政策にしていく。

その先には、環境と経済の両立、そしてあわら市の誇りある未来が広がっています。

質問

  • ゼロカーボンシティを表明したあわら市における、これまでの具体的な取り組みと今後の重点施策について
  • 物価高騰下における生活支援策としての、ごみ袋価格見直しの考え方と収支構造に関する市の見解
  • ごみ分別・再資源化の“見える化”による、市民協働によるコスト削減の可能性と今後の情報発信の方向性
  • リサイクル・クリーンエネルギー分野における企業誘致の位置づけと、経済政策との連動性
  • ごみ分別を通じたまちの誇りづくりと、意識向上のための制度設計に関する提案

要約

あわら市のゼロカーボン政策を、市民生活と結びつけるための具体策を提案しました。

中心テーマは「ごみ袋価格」と「分別の見える化」。

  • ごみ袋価格の見直しは、生活支援の象徴的な政策である。
  • 分別・再資源化の徹底により、処理費の抑制と環境負荷の軽減が同時に進む。
  • その成果を“見える化”し、市民と行政が協働してコスト削減の実感を共有できる仕組みが必要。
  • 環境と経済を連動させ、リサイクル産業の誘致などで新しい地域経済モデルを目指す。

「目の前のごみ袋1枚が、あわら市の未来につながっている」――

そんな意識を、市民みんなで共有していくことが、次のあわら市をつくる第一歩です。

本分

青柳篤始

あわら市はゼロカーボンシティを表明し、脱炭素社会の実現に向けて着実に歩みを進めています。これは単なる環境政策ではなく、地域の将来像をどう描いていくかという街づくり全体に関わる重要な指針でもあります。

 こうした市の方針を理念として掲げるのではなく、どのように市民の日常へ落とし込み、実際の行動や仕組みに変えていくのか。この具体化のプロセスこそがゼロカーボン政策の鍵であり、同時に地域の誇りにも繋がるのではないでしょうか。

 その上で今回、私はゴミ処理をテーマに取り上げます。今、市民の皆様が日々の暮らしの中で強く実感している負担の一つがゴミ袋の価格です。物価高騰が続く中、この価格は単なる制度の問題ではなく、生活に直結する実感あるコストとして多くの方が敏感に受け止めています。だからこそ、ゴミ袋代の見直しは、私は本当の物価高騰対策であると考えています。市民生活の負担を軽減する象徴的な政策であり、行政が生活者目線で課題に向き合う姿勢の表れでもあります。

 一方で、その実現のためには、当然ながら行政経費の見直し、すなわちゴミの分別の徹底や再資源化の推進が必要不可欠です。市民と行政が一体となって、資源循環社会を支えていくこと、この協業の姿勢が何より大切です。

 生活支援と環境投資、この二つは相反するものではなく、むしろ連動させることこそが、これからの自治体運営のあるべき姿だと私は考えています。

 今回の質問では、この観点からゴミ袋の価格、ゴミ処理費用、分別の見える化といった点を中心にお伺いしてまいります。

 そこで、まずお伺いします。あわら市がゼロカーボンシティを表明してから、これまでにどのような具体的な取り組みを行ってきたのか。そして今後、脱炭素社会の実現に向けてどのような分野や施策を重点に進めていくお考えなのか。市の見解をお聞かせください。

市民生活部長、江川嘉康

 ゼロカーボンシティを表明したあわら市におけるこれまでの具体的な取り組みと今後の重点施策についてのご質問にお答えします。市では、ゼロカーボンシティ宣言後、庁内を横断した推進チームを設置するなど、脱炭素に向けた取り組みを行ってまいりました。1年目となる令和5年度は、できることから始める脱炭素として、ペーパーレス化の推進などにより、ゴミの排出量削減に取り組んでまいりました。

 令和6年度には、脱炭素の知識を深め、より効果的な政策立案に繋げるため、外部専門家の堅達京子氏をお招きし、講演会やワークショップを通して様々なアドバイスをいただきました。本年度は市役所庁舎、創作の森などの公共施設へのLED導入を実施するとともに、具体的な脱炭素の工程を示す「脱炭素ロードマップ」の策定を予定しております。その他、「公共施設への太陽光設備導入ポテンシャル調査」なども併せて行っております。また、ゼロカーボンシティ推進チームの提案の一つとして、本年4月からフレアにおいて、市内で発電された太陽光発電の電力を使用する電力の地産地消の導入も行ったところです。

 一方、市民の皆様に対する取り組みとしましては、令和5年度に企業の協力を得ながら、市内10ヶ所にEVカーシェアのステーションを設置しており、令和6年度からは、住宅用太陽光発電導入に対する補助を開始しております。こうした取り組みを通じて、二酸化炭素の削減や災害時の非常用電源としての活用方法など多様な利用方法の周知を図っております。

 このほか、市民会議が省エネ活動の一環として、グリーンカーテンの普及促進や、家族で取り組む「わが家のエコ報告」、環境学習とセットにした海岸清掃など、市民の皆様が参加しやすい事業も実施しております。今後の重点施策としましては、「公共施設への太陽光設備導入ポテンシャル調査」や、本年度策定する「脱炭素ロードマップ」に基づいて、学校、公民館などの公共施設へのLED導入や、太陽光発電施設の設置など、本市の脱炭素に向けた具体的な取り組みを加速していきたいと考えております。(「議長」と呼ぶ者あり)

青柳篤始

 あわら市はゼロカーボンシティとしての第一歩をできることから始めたという姿勢で踏み出した。なかでもゴミの減量化は最も身近な取り組みの一つであり市民と行政が取り組む環境政策の象徴でもあります。省エネや太陽光発電など取り組みが進む中で、自らが日々出すゴミに目を向けることは、どれだけ技術が進化しようとも変わらぬ環境との向き合い方として大切にしていくべき姿勢だと感じます。

 そうした意味で、次の質問は、市民生活における最も具体的な接点の一つであるゴミ袋の価格についてお伺いしたいと思います。市民生活の中で、ゴミ袋の価格は日常的に使用するものであり、物価高騰の影響を最も実感しやすい項目の一つです。

 現在、あわら市で最も使用されている使用されているのは、可燃ゴミ用の45Lの袋かと思いますが、その価格は10枚入りで350円、近隣の坂井市では300円で販売されており、こうした格差について、市民からも関心の声が上がっています。

 ゴミ袋の価格には、ゴミ処理にかかる費用の一部をご負担いただいていると承知しておりますが、その具体的な構造や考え方について改めて確認させていただきたいと思います。

 そこで伺います。現在、ゴミ袋価格におけるゴミ処理費用の負担割合はどのように設定されているのか。また、物価高騰への対応や生活支援の観点から、ゴミ袋価格の見直しについて市としてどのようなお考えなのか、今後の方針をお聞かせください。

市長 森 之嗣

 物価高騰下における生活支援策としてのゴミ袋価格見直しの考え方と、収支構造に関する市の見解についてということで、ご質問にお答えをしたいと思います。

 市では、ゴミの適正処理や資源化、減量化を推進するため、旧町時代から市民の皆様のご理解とご協力のもと、ゴミの収集や処理、処分にかかる費用の一部を一般廃棄物処理手数料としてご負担いただくゴミ袋の有料化に取り組んでまいりました。現在の市の指定ゴミ袋の価格は令和2年度に改定しており、価格の設定に際しては、ゴミ処理費用に対するゴミ袋販売収入の割合を12%程度にするとしておりました。

 しかしながら、価格改定後、ゴミ処理費用のゴミ処理費用は増加傾向にあり、直近の令和6年度の市民の皆様の負担割合は10.6%と低い水準になっております。また、令和10年度からは、清掃センター焼却設備の再延命化工事が予定されており、今後もゴミ処理関係費用の増加の傾向は続くものと予想をしておりますが、現時点では市全体の財政運営として、様々な財源の確保や工夫などにより、現在のゴミ袋の価格を維持したいと考えているところでございます。

青柳篤始

 答弁では、現時点ではゴミ袋の値下げは難しいという見解が示されました。実際、ゴミの処理にかかる費用は年々増えているとのことで、その現状は理解しております。一方で、ゴミ袋の価格は令和2年以降据え置かれており、市が負担している割合は年々大きくなっているということになります。つまり数字だけ見れば、市民のゴミ処理に対する自己負担費は、少しずつ下がっているということでもありますが、市民の感覚としてはゴミ袋は高いままという印象が強く残っています。この感じ方の差を埋めていくには、ゴミの分別や再資源化が実際にどれだけコストに影響しているのか。その関係性をもっと見える形で共有していくことが大切だと考えています。

 そこで次に、ゴミの分別と再資源化の見える化についてお伺いします。ゴミ処理にかかるコストを抑えるために、焼却や埋め立てに回る量を減らすことが不可欠であり、その鍵となるのが市民一人一人による適切な分別の実践です。あわら市においても分別のルールは周知されており、多くの市民に協力されていますが、一方で自分の分別がどれだけ効果を生んでいるのか、リサイクル率がどう推移しているのかといった成果が見えにくいという声もあります。

 近年では、全国の自治体で、分別量や再資源化の見える化を進める事例も出てきており、市民の行動が処理費用の削減や環境保全にどのように繋がっているのかを共有することで、さらに協力を得やすくなると考えられています。

 そこでお伺いします。ゴミ分別や再資源化の取り組み状況を市民に見える化するような情報発信の強化について、市としてどのようなお考えか。また、今後そのような取り組みを入れる予定があるのか。あわせてご見解をお聞かせください。

市民生活部長 江川嘉康

 ゴミ分別、再資源化の見える化による市民協働によるコスト削減の可能性と、今後の情報発信の方向性についてのご質問にお答えします。

 議員ご指摘の通り、ゴミ処理費用というコストを削減するためには、ゴミの量を減少させることが非常に重要となります。これはゼロカーボンシティの推進にも大きな役割を果たすものと考えております。こうしたことから、市では新たな取り組みとしまして、これまで食品用プラスチック容器包装のみを対象としていました廃プラスチック回収について、本年度末から硬質プラスチックを回収対象に加えることを予定しております。これにより、これまで不燃ゴミや可燃ゴミとして処理されていたプラスチック製品について、資源ゴミとして回収することにより、ゴミの減量化に繋がるものと期待しております。

 また、ゴミ関連の情報発信につきましては、これまで市民対象の「わが家のエコ宣言」を通じた家庭内のゴミ削減の取り組みの周知や、環境展において市のゴミの状況を掲示するなどのほか、主な成果報告という形でも公表しております。しかしながら、わかりやすく見える化した継続的な情報発信という観点では十分な取り組みとは言えないと感じております。

 他市の事例を見ますと、広報紙やホームページを活用し、ゴミの収集量や品目別排出状況、市民の取り組みの事例紹介などを定期的に発信している自治体もございます。こうした先進事例を参考にしながら、本市の現状に即した見える化した情報発信に努めていきたいと考えております。

 ゴミの減量化は、二酸化炭素の排出量削減に資するとともに、直接的なゴミ処理費用の削減にもなり、最終的には市民の皆様の負担軽減にも繋がることにもなりますので、今後もゴミの減量化に向けた取り組みを行っていきたいと考えております。

青柳篤始

 ぜひ市民の皆さんにわかりやすい形で情報発信をしていただきたいなというふうに思います。それで皆さんが協力してもらえるような、どうしたら協力してもらえるんだろう、そういったところを着眼点としてやっていただきたいなというふうに思います。以上、ゼロカーボンシティとしての市の方向性を踏まえて、ゴミ袋の価格の見直しと、それを可能にする市民協働による分別再資源化の見える化について質問させていただきました。

 皆さんにお願いがあります。まず、近年全国で続いてるモバイルバッテリーなどのリチウムイオンバッテリーの誤投入による火災事故についてあわら市においても無関係ではありません。処理場の稼働停止は市の財政や安全に直結する深刻なリスクです。こうした事故を防ぐには、分別のルールの徹底と日常的な注意喚起の積み重ねが不可欠だと思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。次に、ゴミの分別と再資源化が進むことで、焼却や埋め立てに係る処理量が減り、結果として処理費用が抑えられます。そこからゴミ袋の価格見直しの余地も生まれてくる。

 市民生活の負担軽減と環境政策の推進は対立するものではなく、むしろ両立可能な好循環を生むものです。ただし、市民の皆さんにとってはその効果が実感しにくいという面があります。しっかり分別しているのに成果が見えない。ゴミ袋の価格は据え置きなのに処理費用の話ばっかり聞こえてくる。こうした実感の薄さを乗り越えるには、自治体が丁寧に情報を届け、行動と結果の繋がりを見える化していく努力が必要だと感じています。

 分別の促進は重要ですが、過度な分別はかえって協力をする人を遠ざけてしまいます。実際に包装容器リサイクル法では、シールを無理に剥がす、たわしでゴシゴシ洗うといった手間は不要とされています。環境省もプラスチック製の食品容器は軽く水洗いし、乾かす程度で十分としています。市民ができる範囲で安心して協力できる分別ルールこそが長く続く環境行動に繋がるのではないでしょうか。このように、どうすればできるかという視点を持つことが、これからの自治体運営には不可欠です。

 もちろん、自治体ごとに制度の違いや背景事情があることは理解しています。しかし、できない理由を述べるだけではなく、どうすれば前に進めるのかを市民とともに考えていく姿勢が町の成長と信頼を育てるはずです。

 さらに企業誘致の観点からもあわら市の環境配慮型の取り組みは非常に重要です。洋上風力発電に代表されるクリーンエネルギーは入口の政策であり、リサイクルと再資源化はその出口にあたります。環境政策と経済政策は表裏一体であり、そこに経済効果が生まれる構造こそが、現在の街づくりに求められているものです。リサイクル関連施設の誘致は雇用の創出だけではなく、製造業を支えるまちとしての環境産業の拠点形成にも繋がるでしょう。これは単なるゴミ処理の話ではなく、あわら市の経済戦略でもあります。

 また、北陸新幹線の延伸により、今後も観光客の増加が期待されます。もちろん、来訪者に対してサステナブルツーリズムを訴えることも重要ですが、同時に、旅行先では気持ちよく消費してもらうことも基本であり、その裏側にはゴミ対策の体制はより重要重要になります。

 あわら市では、家庭ゴミと事業系一般ゴミのゴミ袋が同じ袋で処理されています。例えば、福井市のように袋の色を分けて識別しやすくするなど、発生源の意識付けや制度の発信力を高める工夫も検討の余地があるのではないでしょうか。これは価格の問題ではなく、まち全体の分別意識を次のステージに引き上げるための環境デザインの話です。

 そして、私達のあわら市には、製造業によって支えられているところが非常に大きいです。企業も市民もこの街でともに暮らし、経済と生活を築いてまいりました。だからこそ、分別の徹底によって、お互いがWin-Winになるという実感を持てるまち、それが次のあわら市の姿だと私が信じています。

 分別は面倒くさいから始まるかもしれません。けれど、それが結果として生活の負担を減らし、環境に貢献し、企業と街を繋ぎ、誇りを持てる未来を作っていく、分別はまちを育てる選択肢であり、次のあわらを作っていく第一歩です。

目の前のゴミ袋1枚があわら市の未来と繋がっている。そう考えると、分別も価格もそして環境政策ももっと、きっと自分ごとになるはずです。その気づきを多くの皆さんと共有しながら、次のあわら市をつくっていきたい。そう思いを込めて、私の一般質問とさせていただきます。

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