前回の記事では、家族で勝山市を訪れた時、
「これだけ多くの観光客が勝山まで来ているなら、その一部にあわら市にも来てもらえないだろうか?」
と感じたことを書きました。
恐竜博物館と、あわら温泉。
車でおよそ1時間。
「子どもは恐竜。大人は温泉。」
旅行として考えれば、相性は悪くなさそうです。
でも、ここで一度止まります。
「良さそう」だけで政策を考えてはいけない。
今回は、この思いつきが本当に成り立つのか、実際の数字を見ながら調べていきます。
そして同時に、私がなぜ「調べる」という作業を大切にしているのかについても書いてみたいと思います。
まずは、実際に調べてみる
自分の思いつきを疑ってみる
最初に確認したかったのは、とても単純なことです。
勝山市には、本当にそんなに多くの観光客が来ているのか。
そして、その人たちは本当に県外から来ているのか。
もし大半が福井県内の人だったとしたら、
「全国から勝山へ来ている人を、あわらへ」
という最初の仮説そのものが崩れます。
そこで、福井県が公表している「令和7年 福井県観光客入込数」を確認しました。
2025年の観光客入込数(延べ人数)は、
勝山市 約302万1千人
あわら市 約206万2千人
でした。
勝山市は、2023年の約221万1千人から約36.6%増えています。
一方、あわら市も2023年の約186万7千人から約10.4%増えています。
(出典:福井県「令和7年 福井県観光客入込数」)
ここまでは、
「やっぱり勝山にはたくさん人が来ているんだな」
という程度です。
問題は、その中身です。
恐竜博物館を見ると、数字が一気に変わる
勝山市の代表的な観光地である「恐竜博物館・かつやま恐竜の森」を見てみます。
2025年の観光客入込数は、
約156万2千人。
その内訳は、
県内客 約9万4千人
県外客 約146万8千人
でした。
単純計算すると、約94%が県外客です。
(出典:福井県「令和7年 福井県観光客入込数」)
ここで、最初に勝山で感じた
「県外からかなり多くの人が来ているのではないか」
という感覚には、数字の裏付けが出てきました。
一方、あわら温泉はどうでしょう。
2025年の入込客数は約65万8千人。
そのうち、
県内客 約13万7千人
県外客 約52万1千人
です。
こちらも約8割が県外客です。
(出典:福井県「令和7年 福井県観光客入込数」)
ここで一つ、見え方が変わりました。
あわら市が「県外客に弱い」というわけではありません。
あわら温泉まで来てもらえれば、県外から選ばれている。
では、
勝山まで来ている県外客に、どうやって「あわら」という次の選択肢を届けるのか。
最初の思いつきが、少し具体的な問いに変わってきます。
「人がいる場所」と「泊まれる場所」を見る
さらに気になったので、宿泊施設の収容力も見てみました。
福井県の資料では、宿泊施設全体の収容人員は、
勝山市 1,298人
あわら市 5,904人
となっています。
(出典:福井県「令和7年 福井県観光客入込数」)
もちろん、これだけを見て、
「勝山には宿泊施設が足りない」
と簡単に結論づけることはできません。
宿泊需要や稼働率、施設の種類、旅行者がどこを選んでいるのかなど、さらに確認する必要があります。
ただ、
勝山には非常に強い集客力がある。
あわらには大きな宿泊受入れ機能がある。
という、それぞれの特徴は見えてきます。
だったら、
「勝山か、あわらか」
ではなく、
「勝山と、あわら」
という考え方ができないだろうか。
私は、ここに可能性を感じました。

ここから、もう一段細かく見る
観光客数だけでは、まだ足りません。
次に知りたいのは、
どこから来ているのか。
何歳くらいなのか。
誰と来ているのか。
何を目的に来ているのか。
どこに泊まっているのか。
前後にどこを訪れているのか。
という旅行者の「行動」です。
福井県観光連盟には、こうした観光データを多角的に分析するための「FTAS(福井県観光データ分析システム)」があります。
FTASでは、観光客の属性や訪問目的、満足度、宿泊など、さまざまな観光データを「見える化」する取り組みが進められています。
(出典:福井県観光連盟「FTAS(福井県観光データ分析システム)」)
つまり、
「何人来たか」だけではなく、「誰が、どう動いているのか」を見る。
政策を考える上では、こちらの方が重要になることがあります。
例えば、
恐竜博物館に来ているのが子育て世代の家族なら、温泉だけでなく、子どもと一緒に楽しめる翌日の過ごし方まで提案した方がいいかもしれません。
関西からの自家用車利用が多ければ、訴求方法は変わります。
関東から新幹線で来ている人が多ければ、二次交通が重要になります。
同じ「観光客100万人」でも、
中身が違えば、取るべき政策も違います。
調べていくと、「すでにやっている」ことも分かる
ここで、もう一つ大切なことが分かりました。
あわら市は、すでに恐竜博物館を訪れる観光客を意識した取り組みを行っています。
現在、あわら温泉と福井県立恐竜博物館を結ぶ、
恐竜博物館直通バス「あわら恐竜号」
が運行されています。
(出典:あわら市・福井県観光連盟「あわら恐竜号」案内)
つまり、
「恐竜博物館のお客さんを、あわらへつなげたらどうですか」
と私が一般質問で言ったとしても、
行政からすれば、
「すでに取り組んでいます」
という話になりかねません。
これも、事前に調べる意味の一つです。
知らずに質問していたら、
せっかくの議会の時間を、
すでに分かっていることの確認に使ってしまうところでした。
でも、ここで終わりではありません。
むしろ、
すでにやっていることが分かったところから、次の問いが始まります。
なぜ、そこまで調べるのか
ここからは、観光の話から少し離れます。
そもそも、なぜ私はここまで調べるのか。
理由は単純です。
議員の発言には責任があるからです。
「こうしたらいいのではないか」
と思うこと自体は、誰にでもできます。
しかし、それを議員が公式の場で発言するのであれば、
できる限り裏付けを取っておく必要があると私は考えています。
数字は正しいのか。
法律上できるのか。
市の権限なのか。
県や国の権限なのか。
すでに制度がないのか。
既存事業と重複しないのか。
財源はどうするのか。
誰かに過度な負担をかけないのか。
法律上問題がなくても、倫理や道徳の面で問題はないのか。
そして何より、
本当に市民のためになるのか。
調べるというのは、インターネットで数字を一つ検索することではありません。
できる限りさまざまな角度から、
「自分の考えは本当に正しいのか」
と問い直すことだと思っています。
私は、それも議員の責任の一つだと考えています。

自分に都合のいい数字だけを探さない
これは特に気を付けなければならないと思っています。
最初に、
「勝山の観光客をあわらへ呼べるはずだ」
と結論を決めて、
それを証明する数字だけを探してしまう。
これは調査ではありません。
自分の考えを補強しているだけです。
必要なのは逆です。
自分の仮説を壊す数字がないかを探す。
勝山とあわらの客層がまったく違うかもしれない。
移動時間が旅行者にとって長すぎるかもしれない。
すでに十分あわらへ流れているかもしれない。
直通交通を作っても利用されていないかもしれない。
旅行者が求めているものと、こちらが提供しようとしているものが合っていないかもしれない。
そこまで見た上で、
「それでも可能性がある」
となった時に、初めて考えを一歩先へ進めます。
公式の場は「調べる場所」ではなく、「前へ進める場所」
もちろん、行政に聞かなければ分からないこともあります。
公開されていない数字もあります。
制度の運用について、担当課にしか分からないこともあります。
ですから、確認の質問が必要な場合も当然あります。
ただ私は、
議会や委員会という公式の場で、
「あれは何ですか」
「これはどうなっていますか」
と、事前に調べれば分かることを一つずつ聞いて終わるのは、少しもったいないと思っています。
今回なら、
「勝山市の観光客は何人ですか」
は、自分で調べられます。
「恐竜博物館には県外客が多いですか」
も、公表資料から確認できます。
「恐竜博物館へ行く交通手段はありますか」
も調べられます。
だったら、公式の場で聞きたいのは、その先です。
例えば、
あわら恐竜号によって、実際にどれだけ人の動きが変わったのか。
恐竜博物館を訪れる人のうち、どれだけがあわら市で宿泊しているのか。
宿泊した人が、温泉街や市内の観光地まで回遊しているのか。
どの客層をターゲットとして、今後どの数字を伸ばそうとしているのか。
ここまで行けば、
「事業をやっていますか」
ではなく、
「その事業によって、何が変わりましたか」
という議論になります。
「その質問、本当に必要ですか?」
私は一般質問や委員会で質問を考える時、
自分自身に問いかけたいことがあります。
「その質問は、前へ進めるために本当に必要ですか?」
質問をすること自体が目的ではありません。
発言回数を増やすことでもありません。
議事録に名前を残すことでもありません。
私たちの目的は、
課題を前へ進めることです。
一般質問をした方が前へ進むなら、一般質問をする。
委員会で数字を確認した方がいいなら、委員会で聞く。
担当課と話せば進むなら、直接話す。
市だけではできないなら、県や国へつなぐ。
民間と一緒にやった方がいいなら、そこへ動く。
自分自身でできるなら、まず動いてみる。
一つの課題に対して、
どの方法が最も効果が高いのか。
そこまで考えて初めて、政策づくりなのではないかと思っています。
数字を見ると、次の問いが生まれる
最初は、
「勝山のお客さんを、あわらへ呼べないかな」
という単純な思いつきでした。
しかし調べてみると、
勝山市には年間約302万人の観光入込がある。
恐竜博物館・かつやま恐竜の森では、約156万人のうち約147万人が県外客。
一方、あわら温泉も県外客が多い。
宿泊施設の受入れ規模にも違いがある。
そして、あわら市はすでに恐竜博物館との直通交通にも取り組んでいる。
ここまで分かると、最初の問いは変わります。
「勝山からあわらへ人を呼べないか」
ではありません。
次に考えたいのは、
「すでにある人の流れと施策を、どうすればさらに大きな成果につなげられるのか」
です。
私は、政策を考える時に、この「問いが変わる瞬間」が大切だと思っています。
調べる前と、調べた後で、
自分の質問がまったく同じだったとしたら、
もしかすると、まだ調べ方が足りないのかもしれません。

次は、AIを使って「見える形」にしてみる
ここまででも、かなりの情報があります。
観光客数。
県内客と県外客。
宿泊施設。
既存施策。
旅行者の属性。
移動。
周遊。
これを一つずつ人間が資料から拾い、比較していくこともできます。
ただ、かなり時間がかかります。
そこで、次に使ったのがAIです。
ただし、
「勝山の観光客をあわらへ呼ぶ政策を考えて」
とAIに丸投げしたわけではありません。
何を知りたいのかを考えたのは私です。
どの数字を比べたいのか。
何が気になっているのか。
何を疑いたいのか。
指示を出すのも人間です。
AIは、それらを効率よく整理し、比較し、
私たちが考えやすい形に見せてくれる。
次回は、
「AIは政策をつくれるのか?」
をテーマに、今回集めたデータを実際にどのようにAIへ渡し、何が見えてきたのか。
そして、AIに任せていいことと、人間がやらなければならないことについて書いてみたいと思います。
出典・参考資料
今回の観光客数や宿泊施設の収容人員については、福井県が公表している「令和7年 福井県観光客入込数」を基本資料としています。
観光客の属性や行動については、福井県観光連盟が運用する「FTAS(福井県観光データ分析システム)」を参考にしています。
また、あわら市と福井県立恐竜博物館を結ぶ交通施策については、あわら市および福井県観光連盟が公開している「あわら恐竜号」の情報を確認しています。
なお、観光客入込数の「延べ人数」は、複数の観光地を訪れた場合に重複して数えられるため、そのまま実際の旅行者数を表す数字ではありません。
数字は資料の更新により変わる可能性があるため、今後も必要に応じて最新情報を確認しながら検証していきます。


