【視察報告】桑名市・長島地域を歩いて
――「大切な人が暮らす町」を思いながら、防災を見つめた時間
今回の視察では、現地の防災の取り組みを学ぶだけでなく、個人的にも心に残る時間となりました。
桑名市には、学生時代の同級生が暮らしていることをふと思い出し、この地域の安全が“どこか遠い話ではなく、自分の大切な人の生活とつながっている”ことを改めて感じたからです。
防災を学びながら、同時に人との縁を思い返す。
そんな温かい気持ちになる瞬間が、この視察の始まりでした。
そして強く思ったのは、
防災は施設よりも“人の意識”で完成していくものだということ。
そうした想いも胸に、三重県桑名市・長島町を訪れ、地域を一望できる展望塔から現地の様子を確認してきました。
静かな景色の中で、私たちが向き合う防災の“現実”が浮かび上がってくるような、そんな時間でした。
ここからは、私が現地で学び、感じたことを分かりやすくまとめていきます。
ゼロメートル地帯という“避けられない現実”
桑名市は、木曽川・長良川・揖斐川という三つの大河川の河口に位置し、多くの地域が海抜ゼロメートル地帯です。
大きな地震が発生した場合には、最大震度7、津波・高潮による浸水、地盤の液状化といった複数の危険が連鎖的に起こり得ます。
展望塔から見えた景色は穏やかでしたが、「平時の静けさ」と「潜在するリスク」が同居する地形であることを実感しました。
こうした現実を真正面から受け止めることが、防災の第一歩なのだと思います。
命を守るための“ハード対策”の徹底
桑名市の防災インフラ整備は、どれも「限られた条件で最大限に命を守る」という思想が根底にあります。
● 河川堤防・海岸の耐震化
川側と住宅側で工法を使い分けるなど、理にかなった高度な堤防強化が進められていました。
その一つひとつに、市民の命を守るための思いが感じられます。
● 高台のない地域だからこそ生まれた工夫
長島町には自然の高台がほとんどありません。
その課題に向き合い、高速道路の盛土部分を活用した12か所の緊急避難スペースが整備されています。
「いまあるものをどう活かすか」という知恵と覚悟を感じる取り組みです。
● 「逃げるための橋」
太平橋の耐震補強は、交通確保だけでなく“災害時の命の通り道を守る”という考えに基づいて行われています。
防災の本質が凝縮された施策だと感じました。
市民の行動を支える“ソフト対策”の進化
防災は、施設だけでは完成しません。
市民が“正しく行動できる状態”を整えることこそ、減災の核心です。
● 全戸配布の防災マップ
防災マップを全ての家庭に配布し、自宅周辺のリスクを誰もが把握できるようにしています。
デジタルが苦手な方も取り残さないという姿勢が徹底されています。
● アナログとデジタルの両輪
アクセシビリティ支援ツール「フェアナビ」を導入し、高齢者や障がいのある方でも読みやすい情報環境を整備しています。
● 情報伝達の多重化
緊急速報メール、災害メール、エリアメールを組み合わせることで、どこかが止まっても情報が届く体制をつくっています。
この“冗長性”は、市民の命を守る大きな柱です。
防災は「市だけでは完結しない」
―― 広域避難協定がつくる命のネットワーク
桑名市は、いなべ市、東員町、木曽岬町などと広域避難協定を結び、海抜ゼロメートル地帯の住民が内陸へ避難できる体制を整えています。
さらに、災害時に他市が“代わりに情報発信を行う”協定も結ばれており、自治体同士が支え合う具体的な仕組みが整備されています。
防災は、一つの市だけでは対応しきれない。
その現実に向き合い、広域で命を守るネットワークを築いている点は、非常に重要な取り組みだと感じました。
視察を終えて —— 人の意識が防災を完成させる
今回の視察は、防災の仕組みを学ぶだけでなく、自分自身の原点や、人とのつながりを思い返す時間にもなりました。
そして改めて、
防災は“施設が整えば終わり”ではなく、人の意識によって磨かれていくもの
であると深く実感しました。
あわら市でも、今回学んだことを丁寧に取り入れ、市民の皆さまの命を守る取り組みを確実に進めてまいります。
視察で得た学びを、市政へ真摯に還元していくこと。
その姿勢を、これからも大切にしていきたいと思います。
