質問
あわら市の強みを活かした地域経済振興策とは?
全文
質問者 青柳篤始
新幹線開業に向け、様々なことが急ピッチで進んでいます。ただ、今行っている事業は開業までの計画の一部にすぎません。その計画に従って、沿って実行に移しているにすぎないのです。我々は、100年に一度のビッグチャンスに目を奪われがちですが、当然のことのように、開業後の計画もスマートに立案しPDCAサイクルの中で確実に実行していかなければなりません。
今回の一般質問では、様々な計画の中で、第2次あわら市総合振興計画の中より経済産業における地域振興策の分かりやすい説明を求めます。
市長(森 之嗣)
第2次あわら市総合振興計画における地域経済振興策についてお答えをいたします。
近年、加速度的に進行する人口減少や少子高齢化、新型コロナウイルス感染症などあわら市を取り巻く社会情勢は大きく変化しております。
一方で、令和6年春に控えた北陸新幹線県内延伸や通信技術の発達等により、地方が大都市や世界とつながりやすくなった現代において、持続可能な地域として発展していくためには、地域独自の価値を見いだし、地域ならではの新たな魅力を創出していくことが求められております。
このような課題がある中で、令和3年度から令和7年度までの同計画の後期基本計画が策定されております。
この後期基本計画は、令和6年春の北陸新幹線芦原温泉駅開業を、市勢を飛躍的に発展させるビッグチャンスと捉え、10年後、20年後のあわら市を見据えて、「誰もが夢や希望を持ち元気に笑顔で暮らす活力あふれるまちへ」をテーマとしております。
この後期基本計画の中で、経済産業分野は施策の柱の一つに数えられており、「働く喜びを伝え、にぎわいと活力に満ちたまち」をテーマとして、観光の振興、農業・林業・水産業の振興、工業、商業・サービス業の振興など八つの基本施策とその方針及び事務事業が定められております。
この計画における地域経済振興策としましては、例えば、観光の振興の分野でいえば、あわら温泉と観光資源の磨き上げであったり、インバウンド誘客の推進といった事業が定められております。
また、農業の振興の分野における担い手の育成と支援やスマート農業への支援といった事業や、工業の振興及び商業・サービス業の振興の分野における企業立地の促進や、創業支援と商店街等の活性化といった事業もまた今後の地域経済振興策として重要なものであると考えております。
質問者 青柳篤始
お答えの中に、10年後、20年後のあわら市を見据えてという言葉がありました。日本の人口減少は待ったなしです。あわら市もまた例外ではありません。10年で15%、20年で30%近く減少することを踏まえた上で、長期的な視点に立ち、住民と市、県の財政を圧迫することのないよう努めていただきたいなというふうに思います。
では、あわら市の産業について少し掘り下げていきたいと思います。
あわら市における産業別就業者数は、第3次産業が一番多く6割を超え、次に、第2次、第1次産業は約6%と下がっていくことは把握していますが、産業構造はどのようになっていますか。
経済産業部長、中嶋英一
事業所・企業の基本的構造及び経済活動の状況の統計調査である経済センサスの結果を基に、市の産業構造についてお答えさせていただきます。
経済センサスは5年に一度実施される調査であり、令和3年にも実施されていますが、その結果がまだ一部しか公表されていないため、平成28年に実施された調査結果を基にご説明をさせていただきます。
産業別の事業所は市内に1,282あり、そのうち卸売業、小売業が291事業所でトップとなります。2番目が宿泊業、飲食サービス業の202事業所、3番目に製造業の166事業所が続きます。
次に、産業別の従業員数では、従業員数が1万3,756人のうち、トップが製造業の4,684人で、全体の3割を占めております。次点が宿泊業、飲食サービス業の1,686人、3番目に卸売業、小売業の1,655人と続きます。
また、売上高については、市内産業全体で2,141億5,100万円、そのうち製造業が1,339億9,600万円と全体の約6割を占めトップとなります。続いて、2番目が卸売業、小売業の255億9,100万円、3番目が宿泊業、飲食サービス業の143億6,600万円でございます。
このような結果から、あわら市の主要な産業は、第2次産業である製造業、次いで第3次産業である卸売業、小売業及び宿泊業、飲食サービス業であると考えられます。
質問者 青柳篤始
頭の中にツリーマップチャートをつくっていただければ、あわら市の産業構造についてはよく理解できると思います。
製造業はあわら市の最も重要な基幹産業であり、この町の要です。また、この製造業の就従比率は1.2であり、市外からこのあわら市に多くの人が働きに来ていただけていることになります。各企業の頑張りに敬意を表するとともに、できる限りの支援策をお願いしたいと思います。
工場といえば、最近の円安の影響を受けて海外に輸出しやすくなっている一方で、原材料価格の高騰が重くのしかかっている現状があります。
また、消えた30年とも悪いインフレとも表現されるように、国民1人当たりのGDPは現在24位と、とても外国の方が働きに来ていただける環境ではなくなっているんじゃないか、むしろ海外に出稼ぎに出たほうがもうかるようなのが現状だと思います。
そこで、質問します。
このあわら市で、強い部分をさらに伸ばす支援策と、今後新たに検討していかなければならない支援策をどうお考えですか。
市長、森 之嗣君
あわら市の強みと言える製造業への支援に特化してお答えをしますと、あわら市企業立地促進条例に基づき、特定地域内に工場等の新設または増設を行おうとする企業に対し、最大3億円の助成金の交付や工場等の敷地のあっせんなどの奨励措置を講じているところでございます。
特定地域とは、都市計画法に規定する準工業地域、工業地域及び工業専用地域と工業団地を意味しており、この奨励措置は、主に製造業の企業の事業拡大を支援してきました。
しかし、一方で、市内において、近年のコロナ禍などの影響により、既存の事業を見直し事業転換を図る事業者や、新たな事業にチャレンジする創業者の増加が見られたり、巣籠もり需要の高まりを受け、インターネット販売を手がける小売業が躍進するなど、刻々と変わる社会情勢に対応する形で新たなビジネスが生まれております。
こうした状況の中、市といたしましては、従来の3億円を上限とする企業誘致制度とは別に、市内企業の市内における事業拡大への支援を考えております。
具体的には、従来の企業誘致制度では特定地域のみであった対象地域を市内全域とし、対象業種につきましても製造業、情報通信業、道路貨物運送業、倉庫業、運輸に附帯するサービス業、学術・開発研究機関の6種類であった従来の対象業種に卸売業、小売業や飲食サービス業などを加え、より幅広い業種を対象として新たな支援制度を検討してまいりたいと考えております。
このような新たな支援制度と本年4月に創設したサテライトオフィス誘致補助金や、さらには新規創業を支援するスモール・ビジネス支援補助金といった従来の支援制度により産業全体を支援することで、様々な業種の企業の振興及び誘致を図ることにより、新たな雇用を生み出していくことが人口減少に対する効果的な施策になるものと考えております。
質問者 青柳篤始
経済動向やそれぞれの場所でそれぞれの特徴があるように、あわら市でも本当に行わなければいけないことを見極めて、今後の計画と戦略をお願いしたいと思います。
様々な支援策を用意してくれているということですが、待っているだけでは支援策が使われません。策をつくることが目的ではない。しっかり活用させる仕組みをつくり、次へとつなげることをお願いします。どうか皆さんであわら市のビジネスをスケールさせようじゃありませんか。
先ほどの外国人実習生のように、コロナ後の世の中は私たちがふだん目にしないところでも大きく変化、いや、激変しております。
そんな中でうれしいニュースもあります。旅行に行きたい国ランキング世界ナンバーワン、これは、世界経済フォーラム、通称ダボス会議で世界から得た日本の評価です。
人口減少は経済を縮小させる、10年で10%の人口が減るのであるならば、経済の縮小率は20%とも30%とも言われています。
そんな中、円安による輸出業の独り勝ち以外にも、世界シェアでの観光業は成長の可能性が最も高いと思われます。そして、旅行先として日本を選ぶ大きな要因は自然、文化、歴史です。コロナ前の日本のインバウンド需要は3,000万人、フランスと比較して予想するならば1億人以上の外国人の方が来日する可能性があり、裏づけとして、飛行機で4時間圏内の人口は4億人以上、条件はそろっています。さらに言えば、福井には自然しかない、そう言われてきました。しかし、外国人が選ぶ条件に入っているではありませんか。
あわら市としても、チャンスを逃すわけにはいきません。そこにチャレンジする計画と戦略を明らかにしてください。
市長、森 之嗣君
議員ご指摘のとおり、国内では今後ますます人口減少が加速し、これに歯止めが利かないことが予想されております。各地域が国内観光客の取り合いを行っていても、将来的には尻すぼみになる一方であり、アフターコロナにおける外国人観光客の回復を見据えて、インバウンド需要を取り込んでいくことが重要であると認識をしているところでございます。
あわら市には、美しい景観を誇る北潟湖を含む豊かな自然、浄土真宗中興の祖、蓮如が一大宗教都市をつくり上げた地、吉崎御坊を代表とする歴史、芸術・美術活動の発信地である金津創作の森や金津まつりの本陣飾り物、また、あわら温泉のおもてなしの文化など、世界に誇れる地域資源がございます。
市では今後、令和6年春の北陸新幹線芦原温泉駅開業や令和7年の関西万博など、インバウンド需要が高まる機会を逃すことなく、これらの地域資源の磨き上げを行い、あわら温泉や令和5年春にオープンする道の駅「蓮如の里あわら」を中心としたそれぞれの地域資源を結ぶ2次交通網を整備しながら、世界に向けて広く誘客のための戦略的なプロモーションを行うとともに、外国人対応ガイドの人材育成、統一的なサイン整備や免税店、キャッシュレス決済など、総合的なインバウンドの受入れ環境整備に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
質問者 青柳篤始
大きな流れを決めて、そこへ向けて後押しをする、行政の役目です。それぞれが連携を密にして挑んでいただきたいと思います。チャンスはぜひ勝ち取りましょう。
マーケティングの中にPODマーケティングという言葉があります。他と比較した場合、自分たちの強みという意味を指しますが、地方におけるPODは気候と地形しかないと私は思っています。
実は、あわら市にも、他の場所と比較した場合の強みがあります。気候でいえば、梅雨どきの日照時間がほかと比べると長い、大地をえぐるように湖がある、この二つは、ほかと比べると代えることのできない事実だと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
市長 森 之嗣
北潟湖は、日本の重要湿地500、福井県のすぐれた自然や福井県重要里地里山30に選定されるなど、その景観の美しさや生物多様性の高さにおいて福井県を代表する湖として世界に誇れるものであります。
また、梅雨どきの日照時間が長いことは、坂井北部丘陵地で栽培されている梨をはじめとするフルーツの生育に適した気候であるとも言えます。
こうした里地里山は、癒やしの場として、また、自然観察、農業、林業、漁業体験といったエコツーリズムやグリーンツーリズムなどの体験型の観光資源として価値が高まっております。
このような中で、市としましては、北陸新幹線芦原温泉駅開業を機に、地元と連携しながら豊かな自然を生かした体験型のアクティビティーの充実を図るなど魅力の増強に努め、北潟湖を含む北部エリアの観光活性化を促進することで、地域経済の振興を図ってまいりたいと考えております。
質問者 青柳篤始
強い部分で勝負をしなければ絶対に勝てません。相対的な競争力が結果を左右しますので、活用しないのはもったいない、そう言われないように、ぜひ活用していきましょう。
これから冬に突入しますが、冬の日照時間は、ご存じのように絶望的です。ここから先は、最後に私の提案をしてこの一般質問を終わらせていただきたいなと思います。
今まで出てきたキーワードをワードクラウドでテキストデータを可視化すると、環境、SDGs、観光という言葉が大きくなると思います。そこにあわら市のテキストデータを合わせてみると、製造、梅雨、フルーツ、北潟湖、自然という言葉が重なってくると思います。そして、この言葉をつなげていくことがこそが重要なんだと私は思っています。なぜかと問われたときに、理由をはっきりと答えられる、これが本当のつながりだと思います。例えば、あわら市はフルーツが有名。なぜなら、梅雨どきの日照時間が長いから。この恵まれた日照時間を確保するために、北潟湖の水質を保全しよう。北潟湖で自然を満喫して温泉に泊まろう。全ての言葉が、自然やサステーナブルという言葉につながってきます。そして、そこまでテキストがつながって、最終的にはESG投資をするならあわら市だよなと言われるようになれば、さらに産業は発展すると思います。
この質問の中で、導入することがゴールではない、活用されて初めてゴールが見えてくるという話をさせていただきました。
先日も、これから大きな議論になるであろう地域通貨について、ディスカッションを庁舎内で課を越えた形で行いました。建設的な話が幾つも飛び出して、とても有意義な時間を私は過ごしたと思っています。外部の方が、本当にお役所ですかと、そう言われるぐらいの内容だったと思っています。
こういった取組は、政策のブラッシュアップやプロポーザルの質や内容をさらに引き上げてくれることでしょう。そして、知っているということは、知るということはとっても大切なことです。さらに言えば、考える時間はもっと大切です。そこで出てきたアイデアやプランは、必ず取り上げなければいけません。
実は、そういう仕組みも庁舎内で試験的に進んでいます。いろんな方向からいろんな見方をする、そして、新しい仕組みを取り入れながら、住民の皆さんがより豊かに生活できるよう導いてくださることをお願いいたします。
私がなぜこのような一般質問をしたのかと問われれば、この町に住み続けたいから、この一言に尽きます。あわら市の核心をつくような計画と戦略をお願いして、私の一般質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。