災害時、「誰が、どこに避難しているのか」を早く把握できないか
災害が発生したとき、自治体には多くの仕事が一気に押し寄せます。
避難所の開設、避難誘導、救助活動、物資の手配、そして住民の安否確認。
その中でも、その後の支援の基礎になるのが、
「誰が、どこに避難しているのか」
という情報です。
しかし、避難所の受付では今も紙の名簿が基本となっています。
もちろん、紙には停電時でも使えるという大きな強みがあります。
一方で、大規模な災害になれば、
- 避難者による記入
- 名簿の整理
- 人数の集計
- 避難所から対策本部への報告
- 避難所間での情報共有
といった作業が発生します。
ただでさえ人手が足りない災害直後に、こうした事務作業へ多くの人員を割かなければならない。
ここを、もう少し変えられないだろうか。
そんなところから考え始めたのが、今回の提案です。

マイナンバーカードを「命を守るカード」にできないか
私が考えたのは、マイナンバー制度の基盤を防災にも活用できないか、ということです。
例えば避難所にNFC対応端末を設置し、マイナンバーカードなどを使って受付ができる仕組みです。
制度面や個人情報の取り扱い、どの情報まで連携できるのかなど、整理しなければならない課題はあります。
それでも、
「避難所で一から紙に書く」
という現在の受付方法そのものを見直す余地はあると思っています。
必要な情報を適切に連携できれば、
「この避難所に何人いるのか」
「高齢者はどのくらいいるのか」
「どれくらいの物資が必要なのか」
といった情報を、より早く把握できる可能性があります。
カードを持って逃げられるとは限らない
災害時ですから、当然マイナンバーカードを持って避難できるとは限りません。
そもそもカードを持っていない方もいます。
そこで考えたのが、仮カードとなるNFCタグの発行です。
受付で避難者IDを発行し、その後の避難所生活では、そのIDを使って情報を管理する。
これなら、
- カードを持たずに避難した方
- マイナンバーカードを持っていない方
- スマートフォンを使わない方
も含めた仕組みにできます。
デジタル化を進めるのであれば、
「デジタルを使える人だけ便利になる」仕組みにしてはいけない。
ここは、とても重要だと考えています。
通信が切れた災害現場でどうするか
もう一つ避けて通れないのが、通信の問題です。
災害時には停電だけでなく、携帯電話やインターネット回線そのものが使えなくなる可能性があります。
そのため、衛星回線など通常とは別の通信手段を避難所に確保し、情報を外部と共有できる仕組みも必要になります。
避難所の情報を共有できれば、市だけではなく、県や国、応援に入る自治体なども状況を把握しやすくなります。
これは単なる「受付のデジタル化」ではありません。
私が特に重要だと考えているのは、その先です。
「命を救う仕事」と「命を守る仕事」を分ける

現場では、救助、避難誘導、安全確保など、
その場でなければできない仕事
があります。
一方で、避難者名簿の整理、人数集計、問い合わせ対応、物資情報の整理などは、必ずしもすべて被災地の職員が行わなければならない仕事ではありません。
情報がデジタルで共有されていれば、遠く離れた自治体から支援できる仕事もあります。
私はこれを、
「命を救う行為」と「命を守る行為」を分ける
という考え方で整理しています。
被災地の職員には、できる限り住民のそばにいてもらう。
離れた場所でもできる行政事務は、他自治体などが支援する。
デジタル化によって、こうした役割分担まで変えられるのではないかと考えています。
あわら市だから考えておきたい観光客の安否確認
あわら市には、もう一つ考えなければならないことがあります。
観光客です。
災害は、市民だけがいる時間に発生するわけではありません。
温泉旅館やホテルに多くの観光客が滞在しているときに、大きな地震などが発生する可能性もあります。
そのとき、
「どの施設に何人いるのか」
「誰が避難所へ移動したのか」
「家族からの安否確認にどう対応するのか」
という問題が出てきます。
観光地であるあわら市だからこそ、
市民だけではなく、訪れている人も含めた安否確認
という視点が必要だと思っています。
まずは小さな実証から
もちろん、いきなり本格的なシステムを導入するという話ではありません。
制度、個人情報、通信、設備、運用方法、費用など、検討しなければならないことはたくさんあります。
だからこそ、まずは避難訓練などを使って試してみる。
例えば、

第1段階 避難訓練でのデジタル受付
避難訓練でデジタル受付を試してみる。
第2段階 仮カードによる避難者管理
仮カード(NFC)を使った避難者管理を試してみる。
第3段階 衛星回線を使った情報共有
衛星回線などを使って、離れた場所との情報共有を試してみる。
こうした小さな実証を繰り返せば、
「本当に早くなるのか」
「高齢者でも使えるのか」
「職員の負担は減るのか」
「通信が切れたらどうするのか」
といった課題も見えてきます。
デジタル化の目的は、機械を増やすことではない
防災DXというと、どうしても新しい機器やシステムに目が向きます。
しかし、私が考えている目的はそこではありません。
災害が起きたとき、
現場にいる人が、本当に人にしかできない仕事へ集中できる環境をつくること。
そして、一人でも早く必要な支援へつなぐことです。
マイナンバーカードも、行政手続きのためだけではなく、
「命を守るカード」
として活用できる可能性があるのではないか。
まだ一つの提案段階です。
制度上できること、できないことも含め、これから調べなければならないことがあります。
だからこそ、まず考え、調べ、小さく試してみる。
防災の現場で本当に使える仕組みとは何なのか。
引き続き考えていきたいと思います。

資料をご活用ください
今回まとめた資料は、必要とされる方に自由にご活用いただければと思っています。
誰が最初に考えたのか、誰のアイデアなのかということよりも、こうした情報や考え方が共有されることで、一つでも救えるものが生まれることの方が大切だと思っています。
そして、それぞれの地域や立場からさまざまな意見や考え方が加わり、この提案そのものがさらにアップデートされていけば、それが一番うれしいことです。
災害への備えに、完成形はないと思います。
考え、試し、課題を見つけ、また改善していく。
その積み重ねによって、災害が起きたときに、
少しでも悲しい思いをする人が減ることを心から願っています。
提案資料
マイナンバーを活用した安否確認システム
~防災現場にDXを導入する提案~
令和8年3月16日
青柳 篤始
