埼玉県川口市の3次交通視察レポート|自動運転バスと未来のモビリティ戦略

埼玉県川口市視察報告:3次交通のヒントを求めて

先日、埼玉県川口市に視察に行ってきました。目的は、「3次交通」に関するヒントを得ること。JRなどの大量輸送手段を「1次交通」、タクシーやバスを「2次交通」、そして停留所から目的地の玄関口までの移動手段を「3次交通」と呼びます。この「ラストワンマイル」の解決こそ、今後の公共交通政策において重要なテーマとなります。

人口60万人を超える都市・川口市の交通課題
川口市は東京都に隣接するベッドタウンであり、一世帯当たりの居住人数は2人を切っています。住民の50.7%が通勤手段として電車を利用しており、都市の交通体系は鉄道中心に組まれています。しかし、川口市では公共交通のカバー範囲に限界があり、バス停から300メートル以上離れた地域を「公共サービス困難地域」として指定し、移動困難者の解決策を模索しています。

自動運転バス
川口市では令和2年度から未来技術社会実装事業を進め、バスの便数が少ない地域の移動課題を解決するために「自動運転バス」の実証実験を重ねています。これは、主に鉄道に依存した都市型交通モデルにおいて、2次交通の課題を補完するものですが、あわら市のように自家用車が主な移動手段となっている地域でも、移動困難者の課題は共通しています。

また、自動運転バスに関しては、全国初となる取り組みを行っており、交差点協調システムなど現在主流になっている技術を活用しています。これは、現在進められている「デジタルライフライン全国総合整備計画」の基礎ともなっており、川口市が技術革新の先陣を切る都市であることを示しています。

しかし、自動運転バスを公道で走らせることはまだ多くの課題が残るのが現状です。それでも川口市は未来社会に向けて、なんと「川に蓋をして実証実験を行う」という大胆な提案まで行いました。現在、この計画は実現には至っていませんが、その熱意と挑戦する姿勢には強い意気込みが感じられます。

新たな交通手段の導入には時間がかかる
川口市では地下鉄が開業しましたが、この新路線の定着には20年もの歳月を要しました。新たな交通手段を導入しても、それが住民に受け入れられ、利用者が増えるまでには長い時間と工夫が必要です。ただ「導入しただけで満足」するのではなく、実際に利用者が増える仕組みをどう作るのかが課題となります。

3次交通の未来とIT活用の必要性
3次交通の意義は、「ラストワンマイルの解決」にあります。しかし、そのためにはモビリティの利用に必要なアプリやITデバイスを高齢者でも使いやすくする工夫が不可欠です。現在、多くの都市でシェアサイクルが導入されていますが、高齢者の移動手段としてはまだ十分な解決には至っていません。一方で、永平寺町では「グリーンスローモビリティ」として電動カートを活用する取り組みが進められています。

財政が厳しい地方都市に求められる戦略
川口市のように経済規模の大きい都市では、様々な検証や実験を行う余裕があります。しかし、あわら市のように財政が厳しい地域では、全国の実証事例を積極的に学び、活用することが重要です。成功事例はインターネットで調べれば数多く見つかりますが、その裏にある「苦労話」や「失敗事例」は、現地を訪れなければ聞けないことも多いのが現実です。だからこそ、実際に視察を行い、知見を深めることが重要になります。

次世代モビリティ導入への課題と展望
次世代モビリティを導入するには、技術革新と法律の整備が鍵となります。しかし、それだけではなく、住民の理解と受け入れが不可欠です。さらに、あわら市においては、予算の確保という大きな課題も伴います。

こうした課題を乗り越えるためにも、「デジタルライフライン全国総合整備計画」への参加を視野に入れながら、全国の先進事例を学び、あわら市に合った形で取り入れていくことが大切だと考えています。より良い交通環境を整備し、誰もが移動しやすいまちづくりを進めていければと思います。

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