訪れる人から、地域を支える人へ|京都府亀岡市で学んだ「ふるさと住民」制度の設計

今回の行政視察で、私が本当に驚いたのは、制度の設計そのものでした。

2026年10月30日、京都府亀岡市を訪問し、「ふるさと住民登録制度」について学びました。

亀岡市を知り、関心を持ち、訪れ、交流し、やがて地域を支える活動へと参加していく。

その一連の流れが、非常によく考えられた仕組みになっていたのです。

単に新しい制度をつくるのではなく、人の行動や気持ちの変化まで考えて制度を組み立てる。

今回の視察では、そんな行政の仕事の進め方に、強い関心を持ちました。

目次

住んでいなくても、地域とつながる「ふるさと住民」

亀岡市では、人口減少や地域の担い手不足に対応するため、2026年3月から独自の「ふるさと住民登録制度」を開始しました。

市外に住みながらも、亀岡市に関心を持ち、継続的に関わりたいと考える人を「ふるさと住民」として登録する仕組みです。

例えば、観光で訪れた人、サンガスタジアムでサッカー観戦を楽しむ人、ふるさと納税を通じて亀岡市を知った人、亀岡市出身で現在は市外に暮らしている人など、さまざまなつながりを持つ人が対象になります。

登録は無料で、インターネットから簡単に申し込むことができます。

登録者には、市内で使える電子マネーのウェルカムクーポンや、地域のイベント情報、登録者限定イベントへの招待などが用意されています。

2026年10月29日時点の登録者数は2,482人。

将来的には、2030年度末までに3万人の登録を目指しています。

しかし、この制度の目的は、登録者を増やすことだけではありません。

亀岡市との関係を深め、地域の担い手確保や地域経済の活性化につなげていくこと。

ここに制度の大きな特徴があります。

登録から、実際の地域活動へ

亀岡市では、登録してもらうための取り組みと、登録後に地域との関係を深めてもらうための取り組みを、段階的に進めています。

まず、SNS広告やイベントでのPRなどを通じて制度を知ってもらう。

登録後は、メールマガジンや特典などを通じて亀岡市への関心を深め、再び訪れるきっかけをつくる。

2026年4月から6月には、市内15か所を巡る登録者限定のデジタルスタンプラリーも開催され、亀岡市の公式発表では299人が参加しています。

さらに興味深かったのは、その先の取り組みです。

農作業のお手伝いや、亀岡祭の山鉾の曳き手、地域イベントの運営など、実際に人手を必要としている活動と、市外から関わりたい人を結びつけようとしています。

また、今後は地域活動に継続的に参加する人を「プレミアム会員」として認証し、さまざまな支援につなげる仕組みも検討されています。

観光やイベントへの参加をきっかけに、地域の人と顔の見える関係をつくり、やがて地域を支える側にもなってもらう。

単なる観光振興でも、移住促進でもない、新しい地域との関わり方を生み出そうとしているのです。

私が驚いたのは、マーケティングを取り入れた制度設計

今回の視察で最も印象に残ったのが、制度全体の組み立て方です。

亀岡市では、マーケティングにおける「ファネル分析」に通じる考え方を取り入れ、地域との関係が深まっていく過程を段階的に整理していました。

ファネル分析とは、人が商品やサービスなどを知ってから、興味を持ち、実際の行動に移るまでの過程を捉え、どの段階に課題があるのかを分析する考え方です。

制度設計の考え方
知ることから、地域を支えるまで

地域との関係を段階的に深める仕組み

01
知る
観光・SNS・サッカー観戦

02
関心を持つ
亀岡市の魅力・イベント情報

03
登録する
ふるさと住民登録・特典

04
何度も訪れる
スタンプラリー・地域イベント

05
地域とつながる
住民との交流・地域文化の体験

06
地域を支える
農作業・祭り・地域活動

※亀岡市の視察資料を基に整理した概念図です。
各段階の幅は実際の人数や転換率を示すものではありません。

そして、それぞれの段階に、次の行動につながる取り組みが用意されています。

さらに、登録者数の月別推移や、年代、居住地、制度を知ったきっかけ、イベントへの参加状況なども把握されています。

もちろん、データを集めることと、それを分析して事業の改善につなげることは別です。今後、どのように活用されていくのかも注目したいところです。

ただ、私が驚いたのは、こうしたマーケティングの考え方が、単なる広報の工夫ではなく、制度全体の設計に取り入れられていたことです。

お話を伺うと、アドバイザーと一緒になって、この仕組みを作り上げてきたとのことでした。

私はこれまで、多くの行政視察に伺ってきました。

担当者が個人の工夫として、マーケティングの考え方を取り入れているお話を聞くことはあります。

しかし、担当課としてマーケティングの仕組みを制度全体に取り入れ、一つ一つの事業を戦略的に組み立てている取り組みを見たのは、私の視察経験では初めてでした。

民間企業のマーケティング戦略を設計するように、目的から逆算し、その実現に向けて必要な取り組みを配置していく。

制度の説明を聞けば聞くほど、それぞれの事業がどのようにつながっているのかが見えてきます。

制度を知り、その中身を知り、実際の取り組みを知る。

知れば知るほど、私自身の興味も深まっていきました。

参加する人の満足度と、地域への貢献度

もう一つ、制度設計の中で興味深かったことがあります。

それは、参加する人の満足度と、地域への貢献度の両方を考えていることです。

地域としては、農作業や草刈り、祭りの運営など、人手が必要な活動に参加してもらいたい。

しかし、地域を十分に知らない人に、最初から負担の大きな活動をお願いしても、継続的な関係につながるとは限りません。

地域の担い手を育てる考え方
「参加したい」から「地域を支える」へ

参加者の満足度と地域への貢献を両立する

PHASE 1

地域を知り、楽しむ

農業体験・ワークショップ・イベント

参加する人の楽しさや満足度を大切にする

PHASE 2

交流し、関係を深める

地域の祭り・文化体験・住民との交流

互いの希望を知り、関係を育てる

PHASE 3

地域の担い手として活動する

草刈り・清掃活動・祭りの運営支援

継続して参加できる仕組みが重要

地域が必要としていることと、
参加する人がやってみたいことを結びつける。

※亀岡市の視察資料を基に、地域との関係づくりを
3段階で整理した概念図です。

そこで亀岡市では、地域との関わりを大きく三つの段階で考えています。

最初は、農業体験やイベントなどを通じて、地域を知り、楽しんでもらう段階。

次に、地域の人との交流や文化体験を通じて、関係を深める段階。

そして、地域とのつながりが生まれた先に、草刈りや清掃活動、祭りの担い手など、地域を支える活動へと参加してもらう段階です。

つまり、地域が求めている活動に、最初から参加してもらおうとするのではありません。

参加する人が何を求めているのか、どんな関わり方なら続けられるのかを考えながら、少しずつ関係を深めていく。

「地域が必要としていること」と「参加する人がやってみたいこと」を、段階的に結びつけていく。

この考え方にも、制度設計の丁寧さを感じました。

地域の担い手を確保するという目的は大切ですが、そのためには参加する人にとっても魅力のある仕組みでなければ、長続きしないと思います。

登録者数だけでは測れない成果

一方で、制度がどれだけの成果を生み出していくのかは、これから検証していく必要があります。

亀岡市では、2025年度に制度構築や広報などで500万円、2026年度にも登録促進や運営などで500万円の予算を計上しています。

将来的な登録者3万人という目標も掲げていますが、私が今後注目したいのは、その人数だけではありません。

登録した人のうち、何人が再び亀岡市を訪れたのか。

何人が地域活動に参加し、その後も関わり続けているのか。

そして、地域の人たちにとって、どのような変化が生まれたのか。

登録者数は制度の広がりを示す一つの指標ですが、それだけで地域との関係の深さまでは分かりません。

特典をきっかけに登録することと、地域への愛着を持ち、継続的に関わることは、必ずしも同じではないからです。

また、受け入れる地域側にも、活動の調整や参加者への対応など、新たな役割が生まれます。

そうした負担とのバランスも考えていく必要があると思います。

制度設計が優れていることと、実際に成果が生まれることは、分けて考えなければなりません。

今回の取り組みが、今後どのような実績を積み重ね、どのような改善を行っていくのか。

そこにも大きな関心があります。

あわら市でも大切にしたい、事業のつくり方

あわら市にも、芦原温泉を訪れる観光客、ふるさと納税の寄附者、市外で暮らす出身者など、すでに多くのつながりがあります。

そうした方々との関係を、一度きりの来訪や寄附で終わらせず、継続的な交流や地域活動につなげていくことは、これからのまちづくりを考える上で大切な視点だと思います。

ただ、今回の視察で私が学んだのは、関係人口を増やすという考え方だけではありません。

むしろ、行政が事業をどのように設計し、どのような成果を目指し、そのために何をするのかを明確にすることの大切さです。

例えば、観光客を増やすための事業であれば、単にイベントを開催するだけではなく、まず知ってもらい、興味を持ってもらい、実際に訪れてもらう。そして、再び訪れたいと思ってもらうために、何が必要なのか。

それぞれの段階で目的を整理し、取り組みを組み立てていく。

こうした考え方は、観光政策だけでなく、産業振興や地域活性化、担い手の育成など、さまざまな分野にも共通します。

亀岡市の制度を、そのままあわら市に取り入れればよいということではありません。

それぞれの地域に合った方法を考えることが必要です。

今回の視察では、個々の事業の内容以上に、事業と事業をつなぎ、一つの目的に向かって全体を組み立てていくことの重要性を改めて感じました。

これからの亀岡市にも注目していきたい

人口減少が進む中、地域を支える人を、住民票のある人だけに限定しない。

その考え方も興味深いものでしたが、何より印象に残ったのは、それを実際の仕組みとして、ここまで段階的に設計していたことです。

もちろん、制度はまだ始まったばかりです。

今後の取り組みがすべて計画どおりに進むとは限りませんし、実際に地域の担い手確保につながるかどうかも、これからの成果を見ていく必要があります。

それでも、今回の説明を伺い、これからさらに発展していく可能性を感じました。

そして、成果だけでなく、課題が見えてきたときに、どのように分析し、改善し、次の取り組みにつなげていくのか。

その過程にも興味があります。

制度を知り、仕組みを知り、取り組みを知るほどに、ますます関心が深まった今回の行政視察。

亀岡市の「ふるさと住民登録制度」が、これからどのように成長し、地域にどんな変化を生み出していくのか。

私も引き続き、注意深く見ていきたいと思います。

京都府亀岡市議会の議場で、亀岡市議会議員の平本議員と撮影した写真
亀岡市議会の議場にて。平本議員と。

今回、丁寧にご説明いただいた亀岡市の皆さま、ありがとうございました。

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